近年、各企業派遣労働者を使う企業が多くなっています。
その理由はいくつかありますが、その中で派遣労働者を使うと人件費が抑えられるという声が多く聞かれます。
果たして本当にそうなのか?
今回は、派遣労働者を使うのと、自社でアルバイト(パート)を雇用するのとではどちらがコスト(人件費)を抑えられるのか、具体的な数字を使って1年間のコストを計算し、検証していきたいと思います。
今回、比較対象とするのは、雇用期間の定めのない派遣労働者と自社アルバイト(パート)です。
この2つを比較対象とした理由は、雇用期間の定めのないとは、雇用契約の時点で雇用期間が定められていない常用雇用契約労働者だけでなく、雇用期間は1年、6ヶ月などと決められているが、繰り返し契約が更新された場合は、期間の定めのない雇用とみなされますのでそれらの労働者も含んでおり、雇用期間の定めのない自社アルバイト(パート)や派遣労働者は、各企業一番多く在籍していると考えられるためです。
自社でアルバイトやパートを抱えるのか、それとも派遣労働者を使うのか思案している企業や、実際に自社でアルバイトやパートを抱えている、派遣労働者を抱えているという企業は今後の参考にして頂ければと思います。

<比較データ>
(会社環境)
業種:製造業
1日の労働時間:8時間
1ヶ月の労働日数:20日
1年間の労働日数:20日×12ヶ月
(比較対象)
期間の定めのない自社アルバイト(パート)10人と派遣労働者10人の1年間のコスト
(比較条件)
1時間に派遣会社に支払う費用を派遣労働者1人当たり1時間 1,500円にし、それに対して、アルバイト(パート)に支払う給与を1人当たり時給1,000円、1,100円、1,200円、1,300円、1,400円、1,500円の5段階でそれぞれコストを比較

<コストの計算>
【派遣労働者のコスト】
企業が派遣会社に支払う費用は派遣労働者1人当たり時給1,500円ですので、派遣労働者1人で掛かる年間コストは、2,880,000円となります。
| 1時間のコスト |
1,500円 |
| 1日のコスト (1,500円×8時間) |
12,000円 |
| 1ヶ月のコスト (12,000円×20日間) |
240,000円 |
| 1年間のコスト (240,000円×12ヶ月) |
2,880,000円 |
したがって、10人の場合は、1年間 28,800,000円のコストが掛かります。
【自社アルバイト(パート)のコスト】
●時給1,500円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,500円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、3,273,870円となります。
| 1時間のコスト |
1,500円 |
| 1日のコスト (1,500円×8時間) |
12,000円 |
| 1ヶ月のコスト (12,000円×20日間) |
240,000円 |
| 1年間のコスト (240,000円×12ヶ月) |
2,880,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
25,920円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
23,040円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
144円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
118,080円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
215,942円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
3,744円 |
| 定期健康診断・・・おおよその金額として |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
3,273,870円 |
したがって、10人の場合は、1年間 32,738,700円のコストが掛かります。
●時給1,400円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,400円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、3,050,449円となります。
| 1時間のコスト |
1,400円 |
| 1日のコスト (1,400円×8時間) |
11,200円 |
| 1ヶ月のコスト (11,200円×20日間) |
224,000円 |
| 1年間のコスト (224,000円×12ヶ月) |
2,688,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
24,192円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
21,504円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
134円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
108,240円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
197,947円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
3,432円 |
| 定期健康診断・・・おおよその金額として |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
3,050,449円 |
したがって、10人の場合は、1年間 30,504,490円のコストが掛かります。
●時給1,300円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,300円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、2,827,029円となります。
| 1時間のコスト |
1,300円 |
| 1日のコスト (1,300円×8時間) |
10,400円 |
| 1ヶ月のコスト (10,400円×20日間) |
208,000円 |
| 1年間のコスト (208,000円×12ヶ月) |
2,496,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
22,464円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
19,968円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
125円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
98,400円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
179,952円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
3,120円 |
| 定期健康診断・・・おおよその金額として |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
2,827,029円 |
したがって、10人の場合は、1年間 28,270,290円のコストが掛かります。
●時給1,200円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,200円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、2,617,681円となります。
| 1時間のコスト |
1,200円 |
| 1日のコスト (1,200円×8時間) |
9,600円 |
| 1ヶ月のコスト (9,600円×20日間) |
192,000円 |
| 1年間のコスト (192,000円×12ヶ月) |
2,304,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
20,736円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
18,432円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
115円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
93,480円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
170,954円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
2,964円 |
| 定期健康診断・・・事業主負担分 |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
2,617,681円 |
したがって、10人の場合は、1年間 26,179,810円のコストが掛かります。
●時給1,100円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,100円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、2,408,335円となります。
| 1時間のコスト |
1,100円 |
| 1日のコスト (1,100円×8時間) |
8,800円 |
| 1ヶ月のコスト (8,800円×20日間) |
176,000円 |
| 1年間のコスト (176,000円×12ヶ月) |
2,112,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
19,008円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
16,896円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
106円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
88,560円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
161,957円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
2,808円 |
| 定期健康診断・・・事業主負担分 |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
2,408,335円 |
したがって、10人の場合は、1年間 24,083,350円のコストが掛かります。
●時給1,000円の場合
企業がアルバイト(パート)に支払う給与はアルバイト(パート)1人当たり時給1,000円ですので、アルバイト(パート)1人で掛かる年間コストは、2,184,915円となります。
| 1時間のコスト |
1,000円 |
| 1日のコスト (1,500円×8時間) |
8,000円 |
| 1ヶ月のコスト (12,000円×20日間) |
160,000円 |
| 1年間のコスト (240,000円×12ヶ月) |
1,920,000円 |
| 1年間の雇用保険料(9/1000)・・・事業主負担分 |
17,280円 |
| 1年間の労災保険料(8/1000) |
15,360円 |
| 1年間の一般拠出金(0.05/1000)・・・石綿健康被害救済のため拠出金 |
96円 |
| 1年間の健康保険料(41/1000)・・・事業主負担分 |
78,720円 |
| 1年間の厚生年金保険料(74.98/1000)・・・事業主負担分 |
143,963円 |
| 1年間の児童手当拠出金(1.3/1000) |
2,496円 |
| 定期健康診断・・・事業主負担分 |
7,000円 |
| 1年間のコスト |
2,184,915円 |
したがって、10人の場合は、1年間 21,849,150円のコストが掛かります。

<検証結果>
| |
1年間のコスト |
差額 |
| 派遣労働者:1時間1,500円 |
28,800,000円 |
- |
| アルバイト(パート) |
時給1,500円 |
32,738,700円 |
+3,938,700円 |
| 時給1,400円 |
30,473,030円 |
+1,673,030円 |
| 時給1,300円 |
28,270,290円 |
-529,710円 |
| 時給1,200円 |
26,176,810円 |
-2,623,190円 |
| 時給1,100円 |
24,083,350円 |
-4,716,650円 |
| 時給1,000円 |
21,849,150円 |
-6,950,850円 |
派遣労働者1時間当たり1,500円として派遣会社と契約を結ぶ場合と自社でアルバイト(パート)を雇用する場合とでは、アルバイト(パート)の時給が1,400円以上であれば派遣労働者を使ったほうがコストは抑えられ、1,300円以下であれば自社でアルバイト(パート)を雇用したほうがコストを抑えられるという結果が出ました。
上記の検証結果から、コストの上で派遣労働者とアルバイト(パート)のどちらを使った方が良いかは、時給設定により異なってきます。
したがって、企業としては派遣会社の出した見積もりと自社でアルバイト(パート)を雇用する場合の時給を比較することが必要になり、一概にどちらを使ったほうがコストが抑えられるという事はありません。
いずれにせよ、コストを比較する事は重要なことですので、派遣労働者か自社でのアルバイト(パート)を選択する必要がある場合は、上記の計算により比較すると良いでしょう。(各保険料の料率は平成19年9月現在の料率です。)

<より詳細に比較する方法>
派遣労働者とアルバイト(パート)のどちらを使った方がコストの上で良いか比較する場合、通常は上記の方法で比較します。
しかし、より詳細に比較する方法があります。
それは、派遣労働者が派遣会社から貰う給与の額も勘案して比較することです。
通常、派遣会社は、企業と契約を結んだ場合、企業からもらう費用の3割前後を差し引いて派遣労働者に給与として支払います。
例えば、今回のケースで見ると、企業と派遣会社は派遣労働者1人当たり1時間1,500円の契約を結んでいますから、派遣会社は派遣労働者に1時間1,000円くらいの給与を支払う雇用契約を結び、差額の500円は派遣会社の利益にしているという事です。
このことから、派遣会社とは1時間1,500円の契約を結んでいても、派遣労働者から見れば時給1,000円です。ハローワークや求人誌などでも時給1,000円の募集で出るでしょう。
つまり、企業は1,500円の費用を掛けていますが、労働者から見ると、時給1,000円なので、自社でアルバイト(パート)を時給1,000円で雇用する場合と変わりません。
このことを勘案すると、自社でアルバイト(パート)を雇用したほうが断然コストの上で良いことがわかります。
上記の検証結果を例にすると、1年間6,950,850円ものコストの差が生じます。
さらに1,100円に上げても4,716,650円、1,200円に上げても2,623,190円、1,300円に上げても529,710円のコスト差が生じます。
例えば、派遣会社と1,500円で契約し、派遣労働者の時給が1,000円の場合と、自社でアルバイト(パート)を1,300円で雇用する場合とでは、労働者から見れば当然1,300円のアルバイト(パート)のほうが良く、仕事のやる気も変わってくるかもしれません。
また、1,300円のほうが優秀な人材が入ってくる可能性は高くなります。
このように、労働者の立場からも見て比較すると、より詳細な比較をすることが可能となりますので是非この方法も採り入れて頂きたいと思います。

(最後に)
今回は、期間の定めのない派遣労働者と自社のアルバイト(パート)との比較でコストの上でどちらが良いのかを見てきましたが、派遣労働者を使う場合と自社のアルバイト(パート)のどちらを使った方が良いかというのは、コストだけで判断することが全てではありません。
労働者の雇用期間や求人・採用事務の効率化などコスト以外にも様々な要素があり、それらをまとめて派遣労働者を使ったほうが良かったり、自社でアルバイト(パート)を雇ったほうが良かったりします。
したがって、コストを比較する事はもちろん重要ですが、その他の要素も勘案して最終決定することが一番望ましい決定方法となりますで、各企業様は充分な検討をして頂きたいと思います。
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